ちゃぶ台考
修理を依頼されたもの、預かりもの、元々家に転がっていたもの、などで、いつの間にか、ちゃぶ台が6個あるので、いい機会ですので、ちょっと卓袱台(ちゃぶ台)について考えてみたい!と思いました。
で、まずはwikipedia
Wikipediaで十分なのですが、木工屋からの観点から、今、目の前にある6台を見てみたい!と思います。
まずは小さいものから、、
①430㎜x330㎜x170㎜ 材 けやき
とにかく非常に小さい!高さ170mm、、これはちゃぶ台と言うよりお膳だと思います。華奢なつくりなので、ほぞなども強度がないのでしょう。
足がぐらぐらなので、きつくなるように木端を挟みました。
天板にカーブを付けてデザインしています。
どうしたって構造的に無理があって、脚を太くするなり、折りたたまないでしっかりと組んでしまわないと!と思いました。お膳は明治期に廃れたということ、これは、江戸時代に建てられた古民家から出てきたので、ひょっとすると江戸時代の代物かもしれません。そうすると、実に古い物かもしれません。カーブが綺麗です。 でも、そんなに古くないか。。。
②570㎜x415㎜x215㎜ 材 ハリギリ(天板) 脚材(けやき)
これは近所の骨董屋さんからの預りものです。
預かった時の状態
脚周りはしっかりしていたのですが、天板があまりに汚れていて、かなりねじれていて、しかも割れている状態。
まずは水洗い
この天板はあまりに歪んでいたので、取り敢えずカンナで平面にしないと!と判断。
手押しプレーナーで一気に行きたいところですが、どうも釘などが出てくる心配があったので、荒仕上用のカンナを横(横擦り)に使いました。
これ以上は刃物をいためそうなので、サンダーを使ってなんとなく平面にします。
割れたところには、契りを入れます。
そして、色付け
これも215㎜の高さで、やはりちゃぶ台というよりは、御膳(一人お膳なのでしょう。)
やはり今の時代、御膳はなかなか出番がない気がしますね。
③直径645mmx高さ227㎜ (横直径は5㎜縮んで640mm) 材
セン(天板) けやき(脚材)
これが、いわゆるちゃぶ台のイメージ
裏
高さが227ミリはちょっと低いというか相当低い感じがしますが、この構造だと、たたんだ時に2本の脚が当たってしまうので、しょうがないのでしょう。。パイが大きくなれば比例して高さも大きくする事が出来ます。
脚の形
ちゃぶ台の脚には、何故か真っ直ぐでなくこの様にちょっと片側カーブしているものが多いです。あまり好きではない形なのですが、どうしてこの形が多いのか意味がありそうです。想像するに、この構造の脚,閉まった時にかなりきつめに作らないと、将来ぐらついて来るのでしょう。。そうすると脚を真っ直ぐにして脚全体を当てとくよりも、へこまして2点だけ当たっていた方が抵抗が少ない気がします。
脚材にケヤキという硬木を使っているのもうなずけます。そして、天板にセンという比較的軽い木を使って、持ち運びを便利にしたこのちゃぶ台は実に理にかなって人気があったのでしょう。。
天板の接ぎの木目にはちょっと無理がありますが、現役で使わせてもらっています。
④695㎜x540㎜x300㎜ 材 セン(天板) ケヤキ(脚材)
センとケヤキの組合わせ、オーソドックスなパターンなのでしょう。
裏
長方形にする事で、円卓の高さの問題が解決出来ています。先ほどの脚の形とは逆側をえぐっています。理にかなっていないのか、作りが弱かったのか不明ですが、脚はぐらぐらでした。
ジョイント部も組んだりはしていませんが、脚の形のバランス、木目の選択などから、どうもオーダーで制作された雰囲気は感じられます。いい雰囲気があります。③のちゃぶ台はしっかり作られていましたが、‘オーダーの臭い‘は感じられません。
⑤905㎜x615㎜x320㎜ 材 ケヤキ 天板もケヤキの一枚板
贅沢に総ケヤキで天板も一枚板です。多分、趣味の人が後に、ニスだかなんかを塗って、それが剝げてしまって、非常に汚い感じです。
まず天板だけ、塗装を落としてみました。結構元からのシミが強かったのでしょう。濃く塗装して、分からない様にしていたと思われます。
脚がくらつきやすい問題を、補強材を一本入れる事で何とかなっています。脚の形も、えぐりを強調させています。やはり、天板に薄いけやきを使ったのは無理があったのかもしれません。けやきは馬力が強いのでいろんな所に歪みが出ています。
立派に作られていたのでしょうが、なんだかいいイメージがありません。持った時に、まず重いので、やはり折り畳みのものは‘軽さ‘が大事だと思いました。このサイズのものはどうせならしっかりとした座卓(脚を固定のもの)にすべきだと思いました。
⑥1025㎜x740㎜x330㎜ 材 けやき+けやきのベニヤ
もうこのサイズ、この形はちゃぶ台ではない様な気がします。 ‘折りたたみ座卓‘ですね!!
足が壊れていたので新たにパーツを作りとりあえず使えるようにしました。
金物など一切使わずにバネで足がストップするような作りで、これを見た時はちょっと感動しました。
構造が無垢材の作りでしたが、ちっとも天板が動いていないのが不思議でした。裏を見ても木目が同じでしので、すっかり騙されました!汚れを落としてサンダーをかけていたら、ベニヤ板だったのですね。。
なんだか急に興味がなくなってしまいました。
この脚の格好もちょっとグロテスクな感じです。
まとめとして
やはりちゃぶ台のイメージとして、巨人の星の親父さんが簡単にひっくり返していたように
㋐軽い事
㋑丸いもの
㋒折りたためるもの
㋓職人さんが作った匂いとして、金物を使わないこと
㋔畳に合うもの
こんな感じがちゃぶ台のイメージですね。この6個の中ではやはり③番でしょう。。
この③番のちゃぶ台を、自分の両親(84歳と82歳)が見た時、第一声が、”懐かしい!新婚当時、こんなちゃぶ台で、毎朝三つ葉の味噌汁を出してくれたもんだ!”と言っていました。
古き良き昭和、小さな和室で食事し、それを畳んで、どけて、布団を敷く。そういう時代に最も使われていたのでしょうか? ちゃぶ台には、立派な座卓やダイニングテーブルといったものにはない、”庶民のつつましい生活感”がにじんでいたような感じがするのでしょうか。。。
つづく
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